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管理人の日常だったり、萌えだったり。
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    Love Kind

    というわけで。

    盛大にヴァンガをこじらせてしまったので、自家発電の産物を一つ上げます。
    みなさんヴァンガにハマるといいよ!という意味も込めてます。

    ↓からどうぞ。


    そして最近青祓の映画のCMをよく見かけるようになったので、反射神経が上がったような気がする那儀さんです(笑

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    今日も平和なカードキャピタル。この店から出陣したチームQ4が全国大会を優勝してから、かつてないほどの繁盛を見せていた。わいわいとそれぞれの机に座ってファイトを楽しむ彼らの中でも、一際盛り上がりを見せている一角があった。それは。
     
    「『立ち上がれ、僕の分身! ブラスター・ブレード にライド!』」
    「うおおおキタあああ!アイチさんの分身ですね!」
    「かっこいいなぁ!」
     
    わっと盛り上がる一団を一瞥しつつ、その中で真剣な面持ちでファイトに挑むアイチの顔を盗み見る。
    あの大会以降、アイチは全国大会で二度連続で優勝したチームのリーダーを破ったファイターとして名を馳せた。そのせいか、アイチに憧れるファイターが、このカードキャピタルで彼のファイトを見ようと集まり始めたのだ。
    当のアイチは、何故自分が囲まれているのか分かっているのかいないのか。……いや、分かっていないに違いない。今日は人が多いな、くらいにしか思っていないに違いない。
    漏れそうになったため息を飲み込んでいると、向かいに座っていた三和が何やらニヤニヤ笑っているのが雰囲気で分かって、視線だけを三和に向ける。案の定ヤツは笑っていて、俺と目が合うと、くい、と親指でアイチの方を指さした。
     
    「そんな目で見るくらいなら、お前もアイチとファイトすればいいじゃん。アイツ、お前とファイトすんのすっげぇ楽しみにしてるみたいだしよ」
    「………うるさい」
     
    そんなの、言われなくても分かっている。
    アイチは、恐ろしいくらいに素直だ。その破壊力を一番受けているのは自分だと、自覚している。いつだって、アイチの視線は俺にある。気にされているのは分かっているので、その視線には気づかないフリをしているが、あれに気付かない方がおかしいくらいだ。
     
    『櫂くんともう一度ファイトがしたくて』
     
    アイチはよく、そう口にする。俺の為に強くなりたい。俺とファイトがしたい。その想いは熱いくらいで、俺は困惑することも多い。
    アイチは言う。俺のおかげで、変われたのだ、と。だけどそれは、違うと思うのだ。俺は何もしていない。今のアイチがあるのは、アイチ自身に元々あった強さのおかげだ。むしろ、それに俺が救われたのに、俺がアイチを変えられるはずがないのだ。
    しかしアイチは頑なに、俺のおかげだという。そして屈託のない笑顔で、ありがとう、と言うのだ。
    素直で、純粋で。強さを求める直向きさは、やはりどこか、レンに似ている。だからこそ、同じ力に目覚めたのかもしれない。ただ一つ違っていたのは、アイチは自分の強さも弱さも認めることができたことだろうか。そしてその強さで、レンを打ち破り、救った。感謝とは違うが、アイチのおかげだ、とは思う。
     
    …………―――、アイツはもっと、強くなる。
     
    まだまだ、強くなる。だとしたら、俺ももっと強くならなければ。
    そう思うのに、俺は暇を見つけてカードキャピタルに来ては、こうしてアイチのファイトを見ている。……その理由は、もうすでに分かっていた。
    そんな俺の心境など(悔しいことに)お見通しなのだろう、だから、三和はああ言ったのだろう。
     
    アイチが囲まれているのが気に入らないなら、攫ってこい、と。
     
    しかし、それができれば誰もこんなところでまんじりともせず、ただファイトを見守ることができるわけもなく。
    アイチが楽しそうにファイトするのを邪魔したくはない。そして何より、あのボロボロで小さかった子どもがたくさんの人に囲まれて笑う姿を、見ていたいとも思う。
    だが同時に、じりじりと焼け付く感情があることも、確かで。
     
    「モタモタしてたら、他のヤツに横から掻っ攫われてもしらねーぞ?」
    「………」
     
    それはない、とは言い切れない。だが、あんな風に熱のある言葉を何度も聞いていれば、己ずとアイチの気持ちを察することは可能だ。
    アイチは、俺のことが好きだ。それはきっと、間違いではない。だから。
     
    「余計なお世話だ」
     
     
     
    ファイトが終わったのか、アイチは席を立つときょろきょろと周囲を見渡していた。そして俺たちを見つけると、ぱっと表情を明るくさせた。
     
    「櫂くん、三和くん」
    「よぉ、アイチ!今日は調子良さそうだな」
    「あ、うん。………えっと、座っても、いいかな?」
     
    おずおずといった様子で俺に話しかけてきたアイチに、視線で肯定する。すると嬉しそうに笑って、俺の隣にすとんと腰を落ち着けた。俺はその藍色の頭をジッと見下ろして、何だか不思議な気持ちになる。
    再会した当初、アイチは俺に気を使ってばかりいた。傍に寄るどころか、目を合わせることすら迷惑がられると思っている節があり、ちらちらとこちらを見ては視線を逸らしていた。まるで警戒心の強い猫のようにも見えて、しかしこちらから手を伸ばせば、びっくりして体を縮こまらせてしまう。
    何をそんなに怯えているのか、俺はだいたいの予想はついていた。恐らく、小さな頃に遭っていた虐めが原因だろう。理不尽な暴力は、小さな子どもに無数の傷を残した。それが今も尚、アイチの心に深く刻まれている。
    アイチは気弱で、体も小さいゆえにそういった対象として見られていた。抗おうにも、力も無ければ精神的にも強くないアイチにとっては、苦痛以外の何者でもなかっただろう。俺だったらそんな相手は無視するか、やり返すくらいのことはしただろうが、アイチには無理だったに違いない。
    そんな風に、小さな頃から他人を恐怖してきたアイチにとって、(一応)恩人である俺は嫌われたくない対象だ。だから慎重になるし、俺の動作にいちいち過敏に反応する。あまりにも気にされしすぎて、少々うんざりしたこともある。
    それが顕著だった頃に比べれば、今は随分と変わった。それはもちろん良い意味で。
    俺はこちらの顔色を伺いながらも嬉しそうなアイチの表情を見て、そうだ、と思う。
    俺とお前は、別に敬い敬まれる関係ではない。年齢も、俺が一つ上というだけで、それ以外に敬意を払う必要はこれっぽっちもありはしないんだ。
     
    「櫂くん?」
     
    どうしたの、と俺の視線に気づいたのか、アイチが見上げてくる。いいや、と返しながら、ニヤニヤと笑っている三和の視線をさらりと交わす。なんだよその目は。いや、言いたいことはなんとなく分かるが。
    俺は内心で舌打ちしつつも、あのね、と口を開いたアイチの話に、耳を傾けていた。
     
    一生懸命、相手に伝えようとする姿は、単純に可愛いと思う。聞いて、聞いて、と言われたら、聞いてやりたくなるのが普通の反応だろう。それと同じように、好き、好き、と必死に訴えられて、ついこちらも流されてしまう、なんてことだって、よくあることだと思う。それもそうだ。好意に対し悪意を返すほど、捻くれてはいない。……とは、思っている。
     
    まぁ、こんな風にグダグダと言い訳を並べたところで、結局のところ、俺はアイチからの好意に対し、少なからず思うところがある、ということに変わりは無いのだ。
    三和から言わせれば、それなら応えてやればいいじゃん、ということらしいのだが、それとこれとは話が別だ。
    好意に対し好意を返すということは、そこには何かしらの変化が発生する。俺は別に、今のままでも十分だったし、この距離感が一番のような気がする。遠すぎず、しかし近すぎもしない距離。一定でありながら、決して離れることはないと言い切れる、距離。
    この位置が、一番心地いいような気がした。
     
     
    と、思っていたのだが。
     
     
     
     
     
    「………ん?あれってさ、アイチじゃね?」
     
    学校からの帰り。今日は少しくらいからカードキャピタルに寄れそうだったので、三和と連れ立って店に向かっていると、三和が突然声を上げた。カードキャピタルへの行き道だったし、アイチも店に向かっているのかと思い、何気なくそちらに目を向けて、少し、息を止める。
     
    「隣にいるのって、チームカエサルの皇帝さんじゃねぇか?」
     
    三和の解説がうるさい。そんなの、見れば分かる。いちいち言葉にするな。
    翻る赤のジャケット。隣で笑う藍。二対の色は俺の目に焼きついて、離れない。
     
    光定ケンジ。元全国大会準優勝チームで、Q4とはライバル関係にあるチームカエサルのリーダー。前回の全国大会で、アイチと対戦した男だ。
    しかし、その光定がなぜアイチと?疑問がぐるぐると脳内を巡る。
     
    「へぇ、あの二人っていつの間にあんな仲良くなったんだろうなー」
     
    のんびりとした三和の声が、やけに響いた。仲良く?あれは、仲がいいという言葉で括れるものなのか?
    なぜなら、あの目は……―――。
     
    視線の先で、光定がアイチに手を伸ばす。指先に触れた藍色は、少し申し訳なさそうにしたあとに、ゆるりと揺れる。そして、光定を見上げるその瞳の色に、俺は凍りつく。
     
    憧憬、そして、尊敬。それらが混じった、好意そのものの瞳の色。
    俺に向けられるそれと、同じ、色。
     
    時が、止まる。
     
    何故。その男にその目を向ける?その目は、その色は、俺だけに向けられたものじゃないのか。
    お前は俺が、好きなんじゃないのか。
     
    「………―――」
     
    隣立って歩く赤と藍を見送りながら、俺は固く、手のひらを握り締めた。猛烈な怒りが、俺の視界を染める。ギリギリと俺の理性を締め上げるそれは、再び藍に伸ばされた手によって、最後の力を加えようとしていて。
    次の瞬間、俺は何かに押されるように、駆け出していた。
     
    「っ、ちょ、櫂?!」
     
    三和の声が背後に流れる。無視。俺の視線は二人で固定されている。一直線に向かえば、三和の言葉を聞きつけたのか、二人がこちらへと目を向けた。驚いたように目を見開いたアイチが、櫂くん?と不思議そうに俺を呼ぶのが、唇の動きで分かった。分かったからといって、俺の憤りが治まるわけもなく。
     
    「アイチ」
    「えっ、わ、櫂くん!?」
     
    俺は自分よりも一回り以上小柄なアイチの腕を掴む。そしてそのまま、光定の横を通り過ぎる。背後で呆気に取られた光定の視線を感じたが、無視する。アイチはアイチで、何が何だか分からずに、困惑気味の様子で俺に引きずられている。
     
    「あっ、あの、櫂、くん?どうしたの?」
    「………」
     
    イライラする。不思議そうな、不安そうなアイチの声がそれを助長して、俺は腕を掴む手に力を込める。途端にビクリと体を震わせるのが分かって、ギリ、と奥歯を食いしばった。
    どうして、怯える。アイツにはあんな顔、見せていたくせに……―――!
    俺は近くの路地裏にアイチを引き込むと、ビルの壁に追い込んで、その顔の横に手を付いた。
    ドン!という音が閑散とした路地裏に響く。
     
    「か、い、君………?」
    「………アイチ、お前は………」
     
    俺のことが、好きなんじゃないのか。
    言いかけて、言葉が出てこないことに気付く。何故だ。答えは分かっているはずなのに、アイチにその言葉を言ってはいけないような、そんな、嫌な予感がした。
    だがここまで来て、引き下がれるわけがない。あんな顔を、他の奴にも見せているのだとしたら、俺は。
     
    「お前は俺が、好きなんじゃないのか」
    「え?」
    「答えろ」
    「あ、え、えっと、その、櫂くんのことは、好き、だよ………?」
    「………」
    「櫂くん?」
     
    自分は答えたとばかりに、アイチが見上げてくる。そうだ、確かに、アイチは答えた。俺のことが好きだ、と。だが、どうしてだろう。俺の望む答えではなかった。それが分かって、俺は言葉に詰まる。
    あぁ、眩暈がする。なんてことだ。こんなことってあるか?
     
    好き。そう、好き、なのだ。だが、アイチの「好き」とは、明らかにlikeの意を持っていた。俺がアイチに向ける感情とは、似ても似つかない。同じ言葉のはずなのに、こうも違って聞こえるなんて、誰が想像できる?
     
    「……―――、アイチ、俺は……」
     
    お前が、好きだ。
     
    唸るように告げれば、アイチは一瞬きょとん、と目を瞬かせたあと、かぁ、と頬を赤く染めた。そしてウロウロと視線を彷徨わせたかと思うと、おずおずとこちらを見上げてきて。
    心底嬉しそうに、笑った。
     
    「う、うん。ありがとう、櫂くん」
     
    僕も、好きだよ。
     
    ………―――あぁ。俺はいつまで経っても成長しないな。気づいたときには、もう、遅いだなんて。
    アイチの「好き」と、俺の「好き」。この二つがこうも違えてしまったのは、恐らく、俺が原因だ。俺がアイチの好意を勝手解釈して、そして、自分で自分の首を絞める羽目になってしまった。
    気づいたところで、もう、遅い。だが、この想いを昇華することなどできないと、俺は理解している。
    だったら。
     
    「?櫂、くん?」
    「…………、    だ」
    「え、なに、きこえな、」
     
    い、という最後の言葉は、引き寄せた腕の細さと、寄せた唇の中に、消えて。一瞬だけ触れて、すぐに体を離せば、呆気に取られたように俺を見上げていたアイチが、自分の唇に指先を持って行って、ハッと体を硬直させた。
    驚いたように、怯えたように、アイチはしきりに首を横に振っていた。俺の行動が理解できないのだろうか。それとも、理解したくないということなのだろうか。だが、もう、遅い。
     
    「聞け、先導アイチ」
    「ッ、………ぁ、ぃ……や、あ、かいく、」
    「俺は、お前が、好きだ」
     
    好きなんだ、と言い聞かせるように言えば、アイチはがくがくと体を震わせていた。ふるふると首を横に振って、藍色の髪が揺れる。どうして。なんで。見下ろす藍色の目は、困惑と怯えで揺れている。じり、とアイチが俺から離れようとする。だが、それを許さず、その小さな肩を抱き寄せる。途端に、ビク、と震える身体。突っぱねようとする腕さえ、どうしようもなく、好きで。
     
    「逃げるな」
    「かい、く」
    「逃げることは、許さない」
     
    そうだ。逃げることは許さない。お前は、俺に気付かせてしまった。誰かを想うことの、意味を。だから、お前が途中で投げ出すなんて真似、許されるはずがないんだ。
    その想いをこめて腕に力を入れれば、アイチは再び首を横に振った。だがそれは、逃げるためのものじゃないことに気付いて、そっと顔を覗き込む。
    アイチは泣き出しそうな顔をしながらも、唇を噛んで必死に耐えていた。泣いたら俺が気分を悪くすると思っているのだろうか。そんなアイチの気遣いが、今は、少し痛い。
     
    「…………わ、からな、……分からないよ、櫂くん……」
    「あぁ。だろうな」
    「っ、それでも、いい、の?」
     
    気持ちが分からない、と言われたも同然だった。だが、不思議と心は凪いでいた。何故なら、アイチの言葉の裏には、分からなくても傍にいていいのか、という思いがあることに、気づいたからだ。
    例え同じ想いを返してもらえなくても、傍にいたいと思ってくれる。今は、それだけで十分だった。
     
    「………―――お前が、ここにいてくれれば、いい」
     
    それだけで、いい。
     
    そう言えば、アイチはやはり泣きそうに顔を歪めて、ごめんね、と返した。俺はその言葉は聞かなかったことにして、そっと、柔らかな藍色の髪に顔を埋めた。
     
     
     
     
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