というわけで。
↓から、SQ8月号の奥村兄弟についての小噺です。かなり短いので、こちらに更新です。
いやぁ、奥村兄弟に無限の可能性を見出した8月号でした。・・・・・・いい、いいよ奥村兄弟・・・・・・。

宝物は宝箱に。
か弱い鳥は鳥かごに。
大事に大事に。
だけどそれは、本当に守っていることになるんだろうか。
だって鳥は、自由がよく似合う。
鳥籠の決意
兄さんの背中を見送って、僕はまた一つ、決意する。
………―――ずっと、兄さんみたいになりたかった。僕にできないことをやってのけてしまえる兄さんが羨ましくて、眩しくて、隣に並びたいって、ずっと思っていた。
だけど必死に手を伸ばせば伸ばすほど、兄さんは遠くに行ってしまう。僕のことなんか考えもしないで、走って行ってしまう。それがずっと、嫌だった。
だから、僕の手の届く場所に閉じ込めてしまえば、僕は安心できると思っていた。僕が兄さんを守るから、守るために強くなったから、だから兄さんは、何も知らないで笑っていて欲しいって。
そう、思っていた。
だけど、兄さんは鳥かごなんかに大人しく入るような人じゃなかった。そんなかごなんてぶっ壊して、真っ直ぐに空に羽ばたいて行ってしまう人だった。
今思えばそんなこと、僕はとっくの昔に、知っていたはずなのに。
「ほんとう………兄さんには、敵わない」
恐怖は今でも、僕を襲う。兄さんを失う恐怖は、いつだって僕に付きまとう。だけど。
『助け合うんだ!』
あの時見た背中は、真っ直ぐで。
一度銃を向けた僕に無防備に向けられたそれは、兄さんの強さで。たぶん、僕の甘さだ。
青焔魔の息子として、と自分をそう言い切った兄さんの覚悟を、僕は否定し続ける。そうしてやっと、僕たちは対等で在れるんだと思う。
焔は、あの力は、決して認めない。それが、僕の、決意だ。
どこか遠くで、綺麗な鳥の声が聞こえた。
お前は言う。認められないと。
その言葉がどれだけ、俺を救っただろう。
鳥の覚悟
青い焔を認めることは、実は少し怖かった。何故ならあの力を認めるということは、自分が悪魔で在るということを、認めたことになるからだ。
人間で、在りたいと思った。最後まで。だけどそれは、無理だと分かった。だとしたら、俺は前へ進むために、自分を認めるしかなかった。
だけど、雪男は言う。絶対に認められない、と。
それはまるで、俺が人間で在ると、言ってくれたようなものだった。
本当は、雪男が俺のことをどんな風に考えているのか、聞くのが怖かった。
最初に聞いたときは、死んでくれ、と言われた。
次に聞いたときは、気に食わない、と言われた。
あぁ、俺は心底この弟から嫌われているんだなって、悲しくなった。でもそれも、当然のことだと思った。俺は、ジジイを殺したからだ。
だけど。だけど………ほんとうは。
雪男はずっと、俺のことを守ろうとしてくれていた。俺のことを心配してくれていた。
そのことが、すごく、嬉しくて。ほんの少し、泣きたくなった。
嫌われていたんじゃなかった。ちゃんと俺のこと、考えてくれていた。
それだけで、俺は強くなれる気がした。
青い焔は、相変わらず俺の中で蠢いている。徐々に人間から離れていく俺を、お前だけは、認めないでいて欲しい。
なんて、都合のいいことを考えて、笑う。
「雪男!早く来いよ!イカなくなっちまうぜ!」
振り返った先にいた大切な弟は、笑っていた。
なぁ、その笑顔を守るためなら、俺はどんなことだって頑張れるんだぜ?
だって俺は、お前の兄貴だからな。
PR