というわけで。
今日は父の日!(あと数分で終わりますが)ということで、父の日小噺です。
↓からどうぞ。(ちなみに青祓です
母の日、父の日って大事な日だと思うんですよ。
世の中いろいろな家族がいて、いろいろな親子があると思うのですが、「生んでくれてありがとう」って感謝の気持ちを伝えられる日があってことは、とても大事だと思います。
血のつながりだとか、そんなことは関係なくて。
人は一人では決して生きてはいけないから、一番近くにいる人に感謝する日があるって、素敵ですよね。
ちなみに、那儀さんはパパさんにもママさんにもプレゼントは渡しました。だけど物をあげるっていうよりも、それに込められた気持ちが大事ですよね。

貴方に誓う言葉
激しい雨が、降っていた。
差していた傘から滴り落ちる滴は、靴の上を濡らす。一歩踏み出すごとに、ぱしゃりと水たまりの水が跳ねる。じわじわとズボンの裾から這い上がってくる濡れた感触に、しかし少年は顔色一つ変えなかった。
ただただ、前を向いて歩いて行く。腕に抱えたそれが、カサリと音を立てたが、雨音にかき消された。
少年は、歩いていた足を止めた。じっとその場に佇んで、しばらくの間そのままでいた。ただ、ただ、じっと。一言も口を開くことなく。
そうして、ずいぶんと長い間佇んでいた少年は、その場に腰を下ろして、腕に抱えていたそれをその場に置いた。パタ、とそれは雨に打たれて、小さく抗議する。その様を、少年は座ったまま見つめていた。
「………――――――、父さん」
ぽつり、と少年は囁いた。誰にともなく。いや、相手はいる。少年の目の前に。物言わぬ石碑が。
少年は、石碑を父と呼んだ。
「…………―――――、父さん、僕は、許されない想いを、抱えています」
いつしか少年は傘を閉じて、ただ雨に打たれていた。まるで、己を責めてくれというように。少年は、懺悔する。
「………―――――、父さん、僕は、その想いを、どうしても捨てることができないんだ。何度捨てようと思っても、捨てたと思っても、いつの間にか、僕はまた、抱えている」
少年の白い頬に、雨が伝う。涙のように。いや、もしかしたら少年は、泣いているのかもしれなかった。
「………――――――、父さん、僕の想いは許されない。それは痛いほど、よく分かっているつもりです。でも、それでも僕は……………――――――、あのひとを、」
愛してる、と。
告げた少年の言葉は、激しい雨にかき消された。まるで、誰にも聞かせまいとしているかのように。
少年は、そっと瞳を伏せた。そして、呟く。ずるいよ、と。
「…………―――――、父さんは、僕の覚悟を聞いてくれないんだ。……あのひとのときには、聞いてあげたくせに」
少年は思い出す。かつてここで、決意を叫んだ彼のことを。そしてその日も、雨が降っていたことを。雨が、彼を包んでいたことを。
「…………―――――父さん。僕はたぶん、父さんの所へは行けないから。だから、聞いて欲しいんだ。これが、僕の決意だから」
真っ直ぐに、少年は石碑を見つめた。その瞳には、消えることのない焔が燃えている。
「…………―――父さん。僕は、あのひとを愛してる。だから、ごめん。僕はそっちに行けない。あのひとと、同じ地獄に落ちるんだ」
ごめん、と少年は囁く。あのひとの居場所が、僕の居場所なんだ、と。
その言葉は、激しい雨の中でも、確かに響いた。だが。
「………―――――――、」
雨は、よりいっそうの激しさを見せた。少年はわずかに俯いて、そして、立ち上がった。一歩、二歩、と石碑から離れた少年は、一度も振り返らなかった。
三歩、四歩、と少年の足が石碑から離れた、その時。
ざぁ、と一つ、風が吹いて。
ぴたり、と雨が止んだ。
「…………―――!」
は、と少年が振り返る。その先には、雲間から差した光が、石碑を照らし出していた。そして、ただ、それだけの風景が広がっていた。
「…………――――――」
しかし、少年は目を細めて、笑った。そして一度だけ軽く頭を下げると、再び前を向いて歩き出した。もう二度と、振り返ることせずに。
そして、そんな少年を見送るように、石碑の前には、燃えるような赤い花が置かれていた。
その花の、花言葉は。
…………――――決意。
少年は決意を置いて、その場を立ち去った。
PR