というわけで。
前回に引き続き、ワンピースルゾロ風味。
というか、今回もゾロ出てきません。しかもルフィも出てきません(笑
一味→ルゾロ、みたいな?そんな感じです。
ルゾロじゃなくてもゾロルでも読めます。

たたた、と駆けてくる気配がして、顔を上げる。
新しい薬の研究をしていたので、気化した薬品が化学反応を起こさないように、部屋の喚起がてら外に出たところだった。
軽快に駆けていくのはこの船の船長であるルフィで、その手にはナミのみかんが握られていた。ナミから貰ったのか、それとも木の枝からくすねて来たのか。それは分からないけれど、真っ直ぐに船尾に向かうその姿を見て、あぁ、と納得する。
キラキラとした笑顔。彼はいつだって笑顔だけれど、こんな風に笑うのは、きっと。
呼吸
臆病者で泣き虫だった自分を、仲間だと言って海に連れ出してくれたのは、麦わら帽子をかぶった少年だった。
まだ随分と年若い彼は、その細い体のどこにそんな力があるのか。ドラム王国を苦しめ続けてきたワポルを倒してしまった。そして、仲間になれ、とおれに向かって真っすぐにそう言って。
人間じゃなくて、トナカイでもなくて、鼻も青いし、とずるずると答えを先延ばしにするおれを振り切って、彼は「行こう!」と言ってくれた。
仲間だ、と笑ってくれた。
だから、おれはこの船の船医としてここにいる。
はちゃめちゃな船長を筆頭に、この船のやつらはどこか無茶ばかりをするから、医者としても気が気ではないけれど、逆にやりがいがある。
最初は怪我人が出るたびに動揺していたけれど、最近ではそれにも慣れて、早急に手当てができるようになってきたと思う。速さと、的確な判断。これは医者にとっては重要で、だから、そんな風に成長できている自分が、すごく嬉しかった。
おれは少し上機嫌になりながら、甲板に出て行く。すると、丁度釣をしているウソップがいて、俺はその隣に近づいた。
「どうだ、ウソップ?釣れそう?」
「ん?おぉ、チョッパー!あったりまえよ!俺はかつて釣りの達人と呼ばれた男だぜぇ?」
ふん!とその鼻を反らせて得意げな顔をするウソップに、すげぇ!と感動する。
「すごいやウソップ!それなら、今日の晩御飯は魚料理だね!サンジもきっと喜ぶよ!」
「ま、まぁな!そ、それより、ルフィを見なかったか?さっきまでそこら辺にいたと思ったんだけど」
「ん?ルフィか?ルフィなら船尾のほうに走って行ってたぞ」
「あー……、なるほど」
ちらり、と船尾の方を見たウソップは、納得したような顔をする。多分、この船に乗っている全員が同じ反応をするだろうな。
「ルフィとゾロって、何だかんだで仲がいいよね」
「んー……仲がいい、ねぇ」
「?」
ウソップは少し言葉を濁した。何だろう、と首を傾げていると、ウソップは海に垂らしている釣り糸を、じっと見つめて。
「まぁ、ルフィが最初に仲間にしたのがゾロだしなぁ。一番付き合いが長いっていうのもあるとは思うけどな。でも……アイツらにしか分からない何かってのが、あるような気がするんだよな」
そう言って笑うウソップの横顔を見上げて、なるほどな、と思う。
ルフィとゾロは、性格も容姿も、似ているどころか正反対だ。だけど、何だか纏う雰囲気が似ているような気がする。どこがどう、という正確なことはよくわからないけれど。
二人は呼吸が似ている。そういう、感じだ。
おれがウソップにそう言えば、ひどく感心した風だった。何度も頷いて。
「呼吸、かぁ。上手い表現だな」
そう言って褒めるから、嬉しくねぇぞこのやろー!と怒っておいた。
おれは自分の部屋に戻りつつ、ふと、船尾の方を見た。
そういえば昔、ドクターが言っていた。
『この広い海には、必ず一人一人に運命の相手ってヤツがいるのさ』
その言葉を聞いたおれは、よく意味が分からなくて首を傾げたけれど、今なら、何となく分かる。
「ルフィとゾロみたいなものなのかな?」
ねぇ、ドクター?と問いかけた言葉は、海風に流されて、遠くへと飛んでいった。
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