というわけで。
この前の夏目友人帳のアニメを見て、田沼君に滾ったので突発的に夏目を書いてみました。
基本的に夏目は腐った視点では見ないけれど、色々と萌えたので(笑
夏目大好き!
↓からどうぞ。

どこか遠い目をする君を見るたび、思う。
君の視ている世界はどんななのだろうか、と。
君の見ている世界
妖怪に取り憑かれた。
その感覚は不思議で、自分の中にもう一人違う誰かがいるのだとぼんやりと分かる程度だった。
妖怪は、病に罹った友人を助ける為に、鏡を探していた。そしてようやく見つけたと思ったら、今度はその友人がどこかに消えてしまった。
そして、その友人を探していたら、鏡が雷で割れてしまって、ちりじりになってしまったという。
なんとも、言葉だけ聞けば「大変だったな」の一言に尽きるけれど、そこに込められた想いを察すると、相手は妖怪なのに、少しだけ不憫に思った。
『……、お前、私が怖くないのか』
妖怪が、俺の中から問いかける。俺はそうだな、と少し考えて、怖くないと答えた。
「アイツと一緒にいるからかな。だいぶ、妖怪のことが前よりも分かる気がするんだ」
俺は時々儚げに笑う友人を思い出す。彼は人間と妖怪の区別がつかないほど、妖怪がハッキリと視えているらしい。俺はぼんやりとした分からない世界を、彼はいつも見つめている。
きっと俺には有り触れた光景にしか思えないこの学校も、彼には違った風に視えているのかもしれない。
『妖怪は、怖いよ。……でも、何か憎めないんだ』
そう言って、彼はいつも連れている不細工な猫を撫でていた。あの猫も妖怪で、あの姿は仮の姿らしい。俺は本当の姿を見たことがないから、あの猫がどれだけ凄いのかなんて分からないけれど。
「なぁ……、今ここにも、妖怪は居るのか?」
『居るには、居る。だが、視ないほうがいい』
「どうして?」
『あの妖怪は、厄介だ。目が合えば祟られるぞ』
俺は妖怪の言葉に、少し背筋が寒くなるのを感じた。
目が、合っただけ。
ただそれだけのことで、祟られる。
そんな危ない奴が、普通にうろついている世界で、俺たちは生きているのか。
そして……―――。
「田沼!鏡の破片、あっちにありそうだ!」
ああして、なんでもない顔をしてこちらに手を振っている彼は、そんな危険といつも隣り合わせの世界に立っているのだろうか。
「あぁ、今行く!」
俺は返事をしつつ、なぁ、と俺の中にいる妖怪に問いかける。
『何だ?』
「俺の体を貸してやってる代わりに、お願いがあるんだ」
『……、言ってみろ』
「もし、夏目が危険な目にあっていたら、夏目を守って欲しい」
『……』
「俺は君の目を借りて妖怪の姿を視えたとしても、ただ、それだけしかできないから。……だから、夏目を守って欲しいんだ」
『……お前は、あの人の子が、大切なんだな』
妖怪は、淡々とそう返した。守るとも、守らないとも言わない。
だけど、俺は笑う。多分、この妖怪は俺の頼みを聞いてくれる。そんな気がして。
妖怪は、怖い。
だけど、憎めない。
あぁ、確かにその通りだよ、夏目。
そしてそんな風に教えてくれた君が、俺にとっては大切だから。
「あぁ……、そうだな。大切だよ」
君の視ている世界に触れられて、良かった。
PR